乙女はお姉さまに恋してる

 後ろ姿を見失ったとき。
 ずっと自分の憧れだったお姉さん。今の学校に入学したのも、
長距離を選んだのも、その人に追いつきたいから。
だけどタイムの伸び悩みと言う壁にぶつかった時、初めて由佳里に迷いが生じる。
自分はこのままあの人の影を追いかけ続けることが出来るのか。
中途半端な気持ちを抱えたまま、練習にも身が入らない。そんな彼女への
周囲の接し方は各人各様。厳しい言葉で問題に向き合わせようとするまりや、
お得意のよくわからない例え話で選択の自由を説く瑞穂、
猪突猛進体当たりでぶつかっていく一子。
最終的に気持ちを決めたのは一子の行動を見てなのだとしても、
そこに到るまでの道をつけたのは他の二人であるという段階の踏み方は丁寧。
面白いのは由佳里の選択がどんなものであったかはっきり示されていない点。
陸上を続けるのはいいとしても、それはおそらくお姉さんを追うのをやめて
純粋に自分の為にではなく、改めて追いかけることを選びなおしたから。
「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもの」ではないけど
例え届かなくても自由意志で追いかけたいから追いかける、みたいな。
ところで、瑞穂が貴子とおしゃべりするのはやっぱり世界史の時間なんだ。
ひょっとして先生嘗められてる?
 作監補佐付きとはいえ、一人作監はこの作品では珍しい。ポイントを
大きく外しているところはない一方、特に面白い芝居も見当たらないかな。