海軍爆撃隊

第5回京都映画祭で上映されたもの。昭和15年東宝製作。

演出:木村荘十二
脚色:北村小松 木村荘十二
原作:北村小松
撮影:三木茂
音楽:早坂文雄
装置:安倍輝明 北川恵笥
録音:前田健
照明:岸田九一郎
特殊撮影:円谷英二

昭和14年の映画法の下で製作された、いわゆる国策映画の一つ。
戦後GHQに提出されたリストには既に名前が無かったことから、
ほとんどのフィルムはそれ以前に戦犯追及を恐れて破棄されたものと思われる。
そのまま長らく幻の作品となっていたが、今年の春、本来79分の作品を
50分に短縮したものが発見され、映画祭に合わせて復元が進められた。
発見の時点でオリジナルフィルムはかなり痛みが激しく、現在は
とても修復不可能な状態にまで加水分解が進んでいる。
以上は上映前の解説の受け売り。
 さて本編。爆撃隊の出撃シーンでスタート。敵基地の爆撃に成功し、
帰途につこうとしたところで敵機の編隊に遭遇、戦闘が始まる。
この空戦シーンは特撮と機内の描写が相俟ってなかなかの迫力。
セットの作り物感が一気に気にならなくなるぐらい。
ことに、エンジンにダメージを受けた中野機が落ちていくシーンは見事。
エンジンのアップ、乗員の顔のアップが効果的なタイミングで入り、
緊張感を盛り上げる。高度を下げていく中野機に対し、僚機から
頑張れの声がかかるのも感情移入を助ける。すんでのところで
エンジンが生き返り、ほっとするのも束の間、前方には山々が立ちふさがる。
機内から物を捨てるなど、必死の努力の甲斐あってギリギリで山越えに成功。
特撮的には先ほどの空戦シーンと並んで、この山岳越えも見所。
この後、基地への帰還、そして再度の出撃で幕が下りる。
この間、負傷した乗員が二度目の出撃に参加できず、泣いて悔しがるシーンが
入るのだけど、役者がいい貌をしていた。最初の出撃は陸の上を飛んだが、
再度の出撃では海上を通り、軍艦からの声援を受けるシーンが入る。
そしてラストショットは大空の彼方へ飛び行く爆撃隊。
全体として、観客へのサービス精神を忘れておらず、映画としてよく出来てる。
無理とわかっていてもフルでも見たくなった。
うーん、当時の観客が夢中になったのもわかる気がする。